easy busy

基本は美術鑑賞ブログです。「とりあえず正直に」がモットーです。忙しくても気楽にいきましょう。

バルテュス展@東京都美術館

東京都美術館で開催中のバルテュスに行ってきました。


土曜日のお昼ごろだったのですが、まあまあ混雑してるけれど見づらくはない、なかなかいい感じの人手、という印象でした。

結論から言えば、細かいところまで手がかけてあって、それでいて華やいだ雰囲気を失っていない、とてもよい展示だと思います。おすすめです。

ご本人の壮年期のアトリエでの姿が写っている、大きな写真パネルから始まりますが、さすがのイケメン。アップに耐えます。自信みなぎる、というより自信しか感じられない表情が迫力です。他に自画像も何枚かありますが、何かが混ざっている分、ちょっと写真に負けちゃってるかも。

しかしバルテュスって、振り幅広いですね。バラエティに富んでて、とても面白いです。
 

【特に私の興味を引いたものいくつか】
①少年時代の絵
・ミツ
猫との出会いと別れを描いたかわいい作品です。見ていて、ちょっと蛭子さんの漫画を思い出したのは内緒です。
ピエロ・デッラ・フランチェスカの模写
勉強不足でオリジナルを知らなかったのですが、とても均整のとれたよい構図の絵だと思います。色づかいも浮き出るようですてき。

嵐が丘の挿し絵
エッチングのような雰囲気。愛憎半ばする激しい感情が余すところなく表現されてます。すごいな。

復元された晩年のアトリエ
まさに絵に描いたような「ヨーロッパの画家のアトリエ」です。家具から、絵の具を入れてる豆箪笥みたいな引き出しから、窓から見える景色から、何もかもが完璧です。

④人物画(主に少女像)
世間では過激な絵が話題ですが(まあ仕方ないよね。どうしても目が行くから)、その善し悪しは他の方にお任せします。
ちなみに私の目にはテレーズはまだ本当のほんの子供に見えました・・・

私が魅力を感じるのは、少女の絵でも、ごく普通の、ほとんど露出のない端正な絵です。(数は少ないけどね)
12歳のマリア・ヴォルコンスカ王女
ジャクリーヌ・マティスの肖像
あたりです。特に後者が好きです。オーソドックスで、意志の強そうな表情が印象的。目がきれい。

男性の肖像も皆無ではありません。
ピエール・マティスの肖像
頭髪の描写がシビアすぎる(苦笑)きらいはありますが、生き生きした表情の良い絵です。

読書するカティア
バルテュス自身がこだわったという、煙るような壁面の彩色がとても美しいです。

⑤風景画とか
シャシーにいたときの風景画もいいよね。
冬の風景
すべてが眠ったような暗い画面がよいです。
昼顔Ⅱ
さすがに花(植物)を描いても艶があるよね。

⑥愛用品や写真
最後の部屋です。いきなり色鮮やかな晩年のバルテュスによるコスプレ写真和服と真っ赤な聖職服)がたくさん目の前にでてきたと思ったら、すべて篠山紀信さんの撮影でした。
勝新太郎さん里見浩太朗さんから贈られた着物と帯(たぶんとても高価なもの)、洒落たステッキ、娘さんのために描いた「不思議の国のアリス」のデッサンもあります。どれも興味深いです。

という訳で、とても幅広い、奥深い感じが少しでもわかっていただけたでしょうか。

蛇足ですが、実は私が見終わって一番印象に残ったのは、
バルテュスって、マティスが好きだったんだな」
ということです。(もちろん友情的な意味で)
バルテュスマティスの家族を描いた2枚の絵は、上記のとおり私にとっては多数の絵の中の白眉でしたし、音声ガイドで奥様がおっしゃっていた、「タンタンが大好きで、風景はマティスより上手いといつも言ってた」という言い方が、晩年になってもネタにするくらい親しかったんだな、と。
マティスって、ピカソとも仲がよかったような。
強烈な人たちから好かれるのは、よっぽど包容力があったのかな。(私の見立て違いかもしれませんが)

そうそう、音声ガイドについてです。
「節子夫人がバルテュスの世界をご案内します」という謳い文句にひかれて借りてみましたが、奥様は家族での思い出等をお話しされるのみで、解説は他にナレーションの方がいらっしゃいます。
・・・ですよねぇ。(笑)ナレーターは池田秀一さんです。

でも、ガイドの内容はけっこう面白かったですよ。
奥様がモデルをされたときに、手鏡をデッサンの間じゅう顔の前に掲げていなくてはならなかったのがとっても大変だったとおっしゃっていて、深く納得しました。鏡ってけっこう重いんだよね。
でも、何枚かある、のけぞったようなポーズの絵のモデルの少女たちは、デッサンの間じゅう、もっと大変だったでしょう。ポラロイドが普及して良かった。わたしだったらあんな体勢は一瞬でも取れません。
ちなみにモデルを写真に残すようになってからの写真展が今度やるそうです。行ってみたいと思います。

ショップのグッズとかも充実してます。
見るだけでも楽しいです。お財布と時間に余裕があれば、是非。