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基本は美術鑑賞ブログです。「とりあえず正直に」がモットーです。忙しくても気楽にいきましょう。

そろばん@山種美術館 創立者の自伝

山種美術館の創始者、

パンローリングライブラリーから出ている山崎種二さんの自伝です
パンローリング・・・聞き慣れない出版社ですが、ラインナップをみると経済系と、あとはスピリチュアル関係(引き寄せの法則とか)が2本柱みたいです。取り合わせが面白いです。

この「そろばん」という本は、山種さんが生前に日経の「私の履歴書」で連載していたものをまとめたものみたいです。
私の履歴書」・・・それはがんばって出世したひとがリタイヤ間近になった(あるいは勲章をもらったとか)ときにもらえるご褒美連載(私の中では)。
一世一代の晴舞台なので、自分の業績を盛って描く人と、自分の人生を正直に赤裸々に描く人に別れる気がします。(女優さんとかだと後者もいらっしゃいますよね・・・)
この本は前者寄り、でも盛り方は少ないかな。

基本、本業の相場のことを主に書いてます。以下、印象に残った教えです。
・働き一両、考え五両
→一生懸命働いても一両にしかならないが、考えながら働いたらその一両が五両になる。含蓄ある言葉です。
・FXは素人はするな(意訳)
→みんなそういいますよね。
・天引き貯金しろ
→これもけっこう言いますよね。天引き貯金で種銭を作ってから相場をやれ、借金するな。
・勤め人なら金を残すには「使わない」という選択肢しかない。
→これは、けっこうきつい・・・はっきりいうよねー。でも、本当のことなので仕方ない。
印象としては「正直者」です。みんな本当に心からそう思っていることを書いたんでしょう。

美術関連の記述はとても少ないです。
以下、興味深い部分です。
・少年時代、奉公にでていたときに、掛け軸の虫干しをさせられた。やりながら、「オレもいつかはこんなの欲しい・・・」と思ったので、事業が軌道に乗ると酒井抱一の掛け軸を買ってみたが、真っ赤なニセモノだった。悔しくて書画の蒐集に力を注ぐようになった。
日本画ではずいぶん儲けさせてもらった。一番儲かったのは速水御舟
横山大観先生の家の資産運用をして大成功した。奥様ともどもずいぶん喜ばれた。(先生はお酒が好きだったので宝酒造の株を買ったらしいです。好きな会社の株を買う、王道です)
・自分が本当に大好きなのは建築。兜町山種美術館はこだわってこだわって作った。

最後、山種美術館の開館式典で高松宮さまが降臨なさったことに大感激されているのはほほえましいです。

印象的なのが、絵に関して、あれが好き、あの画家はすばらしいなどの話がほとんどでてこないところです。山種さんはけっこう新進画家を援助していたようなキャプションを山種美術館で見たことあるような気がするので、もっと
「あの巨匠はわしが育てた
的な話があるかと思っていました。
もっと話を盛ってもだれも責めないと思います。
逆にいえば、山種さん自身、絵に関してはこだわり薄いのかもしれないです。

でも、美術館を作ってくれたことに関しては純粋に感謝です。
あんなにお金が湯水のように必要そうなもの、誰もが作れるわけではありません。

山種さんはお若いうちから流れの急な場所に橋をかけたり、みんなのためにお金をつかうことを実践してきたそうです。お金の使い方について考えさせられました。
不況のときこそ有意義なお金の使い方ができるらしいです。

それはそうと、美術館の建物、今もなかなかすてきですが、兜町のときに一度行ってみたかったです。建物も茶室も、山種さんがこだわってこだわって発注したみたいなので。茶室だけでもどこかに移築したりしてないのかな?