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河鍋暁斎 その手に描けぬものなし@サントリー美術館&奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド@東京都美術館

こんにちは。仙です。
さて、今回は始まったばかりの展覧会が二つ。一つは六本木のサントリー美術館で開催中の河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」。一つは上野の東京都美術館で開催中の「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」です。 

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いや、土曜日はね、本当は三鷹でやってるタータン展とついでに近くの ICU の博物館でやってる「型染と印判手」に行くつもりだったんですけどいかんせん雪だったので。結構降ってたので。美術館行ってて帰れなくなったっていうのも間抜けだなと思って・・・。そんで次善の策として、「雪が降ってるから、普段混雑してゆっくり見れない企画展が比較的空いてるはず。 行ってみよっか」という考えだったんですが、 ミッドタウンのサントリー美術館に関しては計算通りだったものの(でもそんなに言うほど空いてはなかったです)、近くの六本木ヒルズ・森アーツセンターギャラリーの「新・北斎展」は、そんな浅はかな目論見を思い切り裏切る混雑の仕方でした。なのでそちらのルートは早々に諦めて上野の方に移動したわけです。北斎展はまた夜に来るからいいわ(・ω・)。


でも、その判断は間違ってなくて結果的に両方の企画展がとてもゆっくり見られる環境でした。そして結果的に閉館時間間際だったので(1時間半弱くらい前だけど)、むしろ独り占め状態で見ることができました。ラッキー!大勝利。思わず見ながらニヤニヤしてしまいました。 怪しい人。

 

結論から言って、どちらの企画展もとても良かったです。
河鍋暁斎の方は、 Bunkamura の企画展と比べて見やすかった気がする。多分作品のサイズの問題。結構大きい作品が出てます。河鍋暁斎って、近年とても人気が出てきたように思いますが、この展覧会を見てその理由が少しわかったような気がします。 暁斎の絵にはストーリーがある。 と思う。
狩野派の粉本もこの企画展には数多く出ているのですが、それと比べると暁斎の画題やアングルの切り取り方にとても特徴があるのが分かります。

  • 可憐な美女からちいさな悪鬼が飛び出してきたのを鍾馗様が退治してたりとか。 この女性はどんな悪行をしたんだろう?
  • 人の本来の姿が見えると言う地獄の鏡に映る姿が非常に若くて美しいのを驚愕の目で見つめている閻魔さまと鬼たち。 ていうことは、本来の姿は普通に考えると老婆なんだろうけど、優しくていい人なお婆さんはいくら何でもそこそこの数はいるはず。おっ!とは思うだろうけど。それがこんなに驚くってことは実は女装のおじいさんかなとか・・・生前にどんな善行を積んでいたのかとか・・・
  • そういう感じでいろんなことを想像できる・考えることのできる面白い絵が揃ってると思います。 

もちろん、絵画として単体で見てもとても美しいです。地獄太夫とかいろんな人が描いてますが、暁斎が描いたのが一番好きです。 立体を平面に写し取るバランスがいいんだと思う。彩色もとても美しいです。一見の価値あります。おすすめです。3月いっぱいサントリー美術館でやってます。展示替えも結構あるみたいなのでできれば私ももう一回行きたいと思います。

 

次は東京都美術館「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」です。
あんまり知識を入れないで見に行ったんですが、伊藤若冲曾我蕭白長沢芦雪岩佐又兵衛狩野山雪・鈴木其一・白隠慧鶴・歌川国芳というそうそうたるラインナップの画家たちの作品を「奇想」という角度で切り取った展覧会、ということらしいです。

 

結構テイストの違う作品が一堂に展示されてるなと見ていくうちに思ったので、「で、結局奇想って何ぞ?」ということで、途中で展覧会の「はじめに」を読みにもう一度振り出しに戻ったのですが、「奇想の系譜」っていうのは、 この企画展を監修されている辻惟雄さんの著書に詳しいらしいです。 

奇想の系譜 (ちくま学芸文庫)

奇想の系譜 (ちくま学芸文庫)

 

 この本、なんとなく聞いたことあるようにする気もするけど、詳しくは知らなかったです 。なんかごめんなさいって感じ・・・。 後で読みます。機会があれば。

 

でも本当にテイストが違うのですよ。確かに奇抜な表現・常識を超えた描写ということは統一されてるのですが。
例えば若冲の「象と鯨図屏風」とかは、地上と海でそれぞれ一番大きな生物を描くことで、ある意味幻想的な風景を描いているのですが、なんかこれは人間が「見てみたいなぁ」と思う景色だな、と思います。 他にも花鳥画や達磨図、虎図等もあるのですが、その鮮やかで精密な色彩と相まって、まるで極楽の景色を切り取ったような美しさです。いい感じに次元が違う気がする。この世と続いている極楽っていうか、いつか行きたいねというか。お寺とかMIHO等の新宗教系の美術館とかが収蔵したがる気持ちがよくわかります。確か辻さんってMIHOの前館長だったよね。この展示にもMIHOの所蔵作品がたくさん貸し出されてます。


反対に曾我蕭白とかは 自分の中に現実の社会とはまったく違う世界があって、それを描いてる気がします。 理解を求めてない感じ。違うベクトルで宗教的な感じ。
岩佐又兵衛は、自分なりに自分の世界をひたすらリアルに描いてるけど、普通の人間はそういう世界に生きてないので結果的に奇想の系譜に連なってしまうというか。だって荒木村重の息子でしょ?なかなか理解するのは無理だって。今回も精密で残酷な絵巻物が展示されていましたが、これは多分全て子供の頃にリアルに見て、その強烈な記憶を吐き出してるんだと思うな。 実際に見た経験がないと、この描写にはたどり着かないと思う。
まあ、又兵衛に限らず江戸時代以前の画家の死体描写を見ると、この人多分近くの刑場に死刑を見に行って、死体をスケッチしてるだろうなあと思うことがとても多いですが。絞首された人間の首の曲がり方とか・・・。

 

全体的にとても面白い展覧会でした、ということで。グッズもいいよろしいのですが、閉館時間ギリギリまで見てたので、物色するまでには至りませんでした。 皆さんお時間に余裕を持ってお出かけください。これからどんどん混みそうな気がするので、正直天気悪い日はお勧めです。 雪の日はいいよ。下は夜の上野公園の雪。ちょっと積もってる。

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比較的近くで絶対帰れる確信がある人に限るのですが。4月7日まで都美でやってるよ。

今週は寒いみたいですね。体調管理に気をつけて。んじゃまた!