芸術家のパトロンの影響力とマッチョな環境における繊細な人の生き方について ~本『アメリカの真の支配者 コーク一族』
こんにちは。仙です。今日も寒いですな(・ω・)ノ。
お休みですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?私はひとつ展覧会に行ったのですが、その前に書いておきたいことがあるのでまずはそちらを。
先日のボッティチェリ展、よかったです(⌒▽⌒)。これ見てると、ルネサンス期におけるメディチ家の存在って、本当に大きかったんだなと思います。
いつかも書いたと思うんですが、メディチ家が没落して、ドミニコ会の修道士サヴォナローラが権力の座につくと(フィレンツェをダメにしたメディチ家を糾弾して贅沢品を焼き払ったらしいよな)、ボッティチェリの華麗さが作品から目に見えて失われます(´・_・`)。なんつーかな、あったはずのキラキラがなくなるんだよね。アートにおけるパトロンって大事なんだなと思いますd( ̄  ̄)。
そんで、最近読んだ本。
コーク一族っていうのは、アメリカ共和党の大パトロンでリバータリアニズムの権化。要するに政府=悪で、企業と個人の自由を追求する一族です。
この動画がわかりやすいかな・・・
コーク・インダストリーズのCEO『コーク兄弟』の総資産を大公開!
んで、コークさんの4兄弟(上の人たちは次男と三男)の長男がフレデリック。美術品収集家で多くの芸術家を支援するパトロン。イギリスのスワン劇場とか、歴史的建造物の補修に莫大な寄付もしてます。今はモナコに住んで、アメリカには所得税を払ってないらしいけど、
コーク兄弟のお父さんのフレッドは石油で財をなしたビジネスマンで、息子たちをものすごく厳しく育てますd( ̄  ̄)。でも、フレデリックは兄弟のなかで一人だけ父親の求める男らしさについていけず、芸術方面にすすみます(>_<)。お父さんはそれを許せないでフレデリックを完全に無視。経済誌のインタビューで「ご家族について話してください」って言われても「妻と息子が3人です」って答えてフレデリックの存在だけ消してるんだよ。エグいよな(´・_・`)。ハーヴァード出身でなかなか優秀な子なのに。フレデリックは老年を迎えても、誰にも心を開かずに孤独に暮らしてるそうです(´・_・`)。
まあ、アメリカのこういうクラスの人たちにとっては芸術に傾倒するのってなかなかリスキーなのかなと思って考えさせられた本です(。-_-。)。
そして著者がリベラルで、コーク兄弟大嫌いだからかもしれないけど、何かっていうと
「フレデリックはゲイだ」って言ってて引く。事実かどうかは置いといて。(本人は否定してるけど)
こういうのを見ると、アメリカでポップ・アートが発展してきた理由がわかるような気がする。ほら、ポップアートって、他の芸術品と比べて、収集しててもゲイ疑惑をもたれにくそうじゃない( ̄▽ ̄)?
そんで、芸術家のパトロンしてるのに、
- 移動に電車やバスを使ったり、
- 使用人が郵便に規定料金以上の切手を貼って出したのを注意したり
- 道に落ちてたお金を拾ったりするのがケチだって言って糾弾されてます。
普段は倹約して歴史的建造物の修復にお金出してるのとか、いいことだと思うけどな(´・_・`)。
あ、要するになにが言いたいかというと、コーク一族(主にフレデリック)のコレクションがすばらしいらしいので誰かちょっとでいいから日本に借りてきてくれないかな、っていうことです。ほら、あれだ、美術方面のひとって有力者の子弟とか多そうじゃないですか。人脈ありそう。(←偏見)
マリー・アントワネットがパリ市長から贈られたベッドとか見てみたくないですか?楽譜とか原稿とか手紙とかの生原稿コレクションもいっぱいあるらしいし。シューベルト、モーツァルト、オスカー・ワイルド、プルースト・・・。絵画のコレクションもすごいらしい。メトロポリタン美術館に専用の施設を建設中らしい。
そしてフレデリックさんの話はこの本のほんのわき役なのでした。個人的には家族・兄弟の争い、特に末っ子のビル(このひともなかなか繊細かつやり手な人。コーク・インダストリーズとは袂を分かち、オックスボウ社を設立)が、家族で過ごした最後のクリスマスに「自分の感情の葛藤、上がり下がりが激しいのは、全部お母さんが原因だ、自分は他の兄弟より愛されていなかった」と母親を責め立てる場面がハイライトです。毒親関連の本にでてきそうな話・・・アメリカンなマッチョマンの典型なのに・・・
結論:繊細な人が無理に強さを求められるのってすごくつらいことなのだな(T_T)
でも、おもしろい本なのでおすすめです。訳もこなれてるし、関心あれば是非読んでみてください。大統領選とかも今やってるし。
そういえばこないだ、バーバラ・ブッシュさんが今大統領選に出てる息子のジェブに
「ジェブは上品すぎるのよ。もっと前に出ないと」
と言ってる、というCNNのツイートを見て和みました。
お母さん、私もそう思いますd( ̄  ̄)。
ちょっと地味さがぬぐいきれないかな、なんて。
言いたいことは書けたので、また次回からは美術展の感想ブログに戻ります。
じゃ、またね。