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ジャン・フォートリエ展@東京ステーションギャラリー

さて、東京ステーションギャラリーのジャン・フォートリエ展を見てきました。アンフォルメルの代表的な作家、ときいて、そこはかとなく難しそうな、よくわからなそうな感じがしたんですが、興味がわいたもので、いちおう行ってきました。
結論としては、とても面白かったです(^◇^)。何となく勉強になった気もします。行ってよかった。

どこがいいかっていえば、一人の芸術家が具象から抽象に表現方法を変えていく過程が、とてもわかりやすく理解できること」です。作品を展示する順番がいいのかな。ひとつひとつ作品を見ただけだと、???となるんだけど、通して見ていくと、なるほど、そうだったのか!みたいな気づきが得られます。多分。

フォートリエの作品の一番初期のところは、ターナーを尊敬していた(確か・・・)っていうのがよくわかるような人物画が多く飾られてます。フライヤーの裏側にある「管理人の肖像」に見られるように、なかなかリアルなものが多くあります。
ただね、この「管理人の肖像」は、みた感じが宇宙人ですvv肌の色と質感がまるっきり粘土vvカエルから進化した人類のようです。この絵に限らず、このひとの女性の肖像は宇宙人率高いです。「黒い裸婦」のぼんやりした丸ふたつみたいな、簡略化された人物のシルエットがそんなかんじ。「青灰色の裸婦」とかは色がやさしいので、ローランサンの描く女性像に見えないこともないですが。
もっとリアルな女性像もありますが、それらのモデルの女性たちはみんな不機嫌そう。幼い子供でさえ、何があったか問いつめたい位の機嫌の悪さ。対して、男性モデルの絵は明るさはないものの、渋くて鋭い感じのいい絵が何枚もあります。この違いは何でしょう?女性が嫌いなのかな?

そんな疑惑は置いといて、これらの初期作品について考えてみると、多分フォートリエが
「人間とはこういうもの」
という考えが頭にあって、それをモデルを通して絵にしたんじゃないかな、と。本人が思っている人間像にピタリとハマるひとは、いい感じの絵が描けるのかな、と。

次のセクションにあるのは静物画です。作品によりますが、これが独特なのです。まだ具象には寄ってはいるのですが、これってそのものが持つ形より、エネルギーを描いてるんじゃないかな?「黒い花」とかの作品は、その花が持つオーラか生命力を絵に写し取ってる気がします。キルリアン写真みたいな。
この延長線上に厚塗りの静物画があります。

そして、代表作の「人質」へつながるのです。
ここに至って、絵は完全に抽象になります。自分の経てきた体験をエッセンスにして具象化し、紙に描こうとしてる感じがします。

こうやってアーティストとしてのフォートリエの変遷を追っていくと、スタイルの変化に深く納得します。やっぱり抽象って、進化形なんだな。はじめてわかったよ(笑)。よくわかりました。納得した!


私は第二次大戦後の、音楽を描いたような絵も好きです。一番好きなのは「黒の青」「雨」かな。「雨」の優しい緑色が好きです。
そうそう、本人のインタビューを収録したテレビ番組?もあります。15分と長いですが、作品の制作過程等が映っていて、なかなか興味深い。
画家本人は、想像したより小柄な線の細い人でした・・・

というわけで、結論。
ジャン・フォートリエ展、おすすめです。
新しいものの見方ができるようになると(新発見ができると)、うれしいです。見て良かったな、と思うよね。

そういえば、東京ステーションギャラリーのパスポートを売り出してました。4000円だったかな?東京駅が会社の最寄りなら、買ってもいいんじゃないでしょうか。
ではでは。